ライフネット生命副社長本の「この本、丸ごと無料です」ってそんなに凄いことなのか???

「この本、丸ごと無料です」
http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20100225/213027/

3月1日、文芸春秋が1冊の新書を全文無料で公開する。無料公開で本は売れなくなるのか、それともさらに売れるのか。電子書籍の登場で揺れる出版業界の注目を集めそうだ。

『フリー』でも注目を集めた、書籍のPDF版を無料で公開するという手法を、今度は、ライフネット生命副社長である岩瀬氏が自著「生命保険のカラクリ」で実施するようだが、うまいなーという印象。なにがうまいって、春秋ではなくライフネットの方。

生命保険業界の新参者のライフネット生命にとって、この本はもともとタダでもいいから日本国民全員に読んで欲しい本のはず。それが、会社立ち上げ当時から注目されていたこともあって、昨年10月発行のこの本はすでに3万部近く売ったそうだ。3万部でもなかなかの数字だと思う一方で、出版から4ヶ月を経過しそろそろ頭打ちの頃合いでもあったと思う。

いちおうそこそこヒットもして、それに伴ない新規保険契約も順調に獲得し(私もその一人だ)、書籍販売の成果も上々でしたねヨカッタヨカッタというこの時期に来て、「じゃあこんどは無料で」とやって第二弾ロケット点火、みたいな展開である。そのおかげで、4ヶ月前の新書があんなふうに日経ビジネスにとりあげられて、こんなふうに場末の個人ブログでもとりあげられて、別に無料でも既に3万部売った以上は懐は痛まないし、むしろ春秋に対してなんらかの補填でもしてあげてるんじゃないかとさえ勘ぐってしまう。そのくらいしたってライフネット生命にとっては痛くも痒くもないはずである。

まあ身も蓋もない言い方をしてしまえば売名行為に近いわけだけど、今旬なプロモーション手法をとることで、「世間一般に対しては」それを感じさせない切れ味を発揮するんじゃないか。その証拠に文春側は極めて覚めた反応。。。。

文春新書の飯窪成幸編集部長は比較的冷静だ。
「我々は自社の持つコンテンツを大切にするために、どうすべきかを考えなければならない。今回のやり方も1つの方法だとは思っているが、ネット上はすべてタダという考え方は危険」

みたいな極めてどうでもよさげなコメントを残しとります。
これは言い換えると「まあ3万部出てくれたし、岩瀬さんがどうしてもって言うからタダで配っちゃうけど、別に俺らにはカンケーないもんねー。まあ話題の手法を活用することにより庶民には先進的取り組みをアピールし、ライフネット生命には恩を売っておくのも悪くないかなエヘヘ」ということ。出版社側としては極めて正しい反応かと。

記事では「出版業界大注目」などと煽っているが、旬の過ぎた商材を格安(あるいは無料)で放出し話題作り&客寄せ(この場合の客とはライフネット生命の新規顧客のこと)するのは、他業界では当たり前のことで、むしろそういうことをせずに返本の山をきずいてきた出版業界が遅れていただけとも言える。それにこの手法をとれるのは、そこそこヒットした(あるいはヒットがあらかじめ予測されている)話題の本だけのようにも思える。やりすぎると見透かされてしまうとこともあるし、もし「出版業界の未来」についての示唆みたいなものをこの事例に期待しているとしたら、期待は裏切られることになるんじゃないか。

この本に関しては、まだ「フリー」の賞味期限がギリギリ切れていないタイミングでもあるので、PDFダウンロード件数においても本の発行部数の再点火効果についても上々の成果を収めると思われます。

ライフネット生命について

上でこのたびのライフネット生命の施策については否定的というか冷めた見解を述べたが、ライフネット生命自体にはすごく期待している。ライフネット生命もいわゆる最近はやり(?)の「中抜きビジネス」である。生命保険会社が契約獲得のために当たり前のように支出してきた外交員(保険のおばちゃん)や販売代理店、莫大な広告費、事務経費、その他もろもろの経費を無くすか圧縮することで、格安の保険料を実現している。また保険料の安さで差別化できない既存の保険会社が、自社の保険商品にさまざまな特約や機能を付加して複雑化していくのに対し、ライフネット生命の保険商品はシンプルでわかりやすい。

正直私自身、いままで生命保険についてあらゆる理解が不足しており、また複雑さのあまり理解しようという努力すら放棄していたのだが、実は生命保険自体の役割は極めてシンプルで、基本さえ抑えておけば恐るるに足りずと思わせてくれたのも、ライフネット生命のサイトを見て以降のことである。

そんなわけでこのご時世、毎月の固定費を少しでも抑えたいと考えている方は、ライフネット生命のサイトで現在加入中の保険証券片手に、同内容で見積もりをとってみることをおすすめする。

以上、前回のエントリーに引き続き、最後はなんか押し付けがましい内容ですみませんでしたw