iPhoneOS 4及びiAdが発表されたのを機に、Googleの先行きを心配してみる。

iPhoneOS 4が発表されてiAdも発表されて、これは各業界のあらゆる方面に飛び火しそうな要素があると思う。ひとつはネット広告業界、もうひとつは出版業界で、こちらはプレゼンでもさらりと触れた程度のiBooksiPhone対応だが、これは実はかなり大きなトピックなんじゃないかと思う。

まずはネット広告業界(=Google)の話から。

一般的には無敵と思われているGoogleだが、実はiAd云々の前から、マイナス要素がちらほら散見されていた。iAdも含めてざっとあげてみると、

  1. まずは今回のiAd。前も書いたが、広告事業はGoogleの唯一無二の収入源である。Youtube含めて他の事業からの収益はまだまだの状況にあって、モバイル分野の広告プラットフォームをAppleに持っていかれるのはGoogleにとっては避けたい(が、iPhoneに関する限り避けられそうにない)。
  2. そのモバイルというのは、デスクトップからユーザの可処分時間を奪いとって成長していく分野。言うまでもなくデスクトップのWeb広告はGoogleの独占市場だが、そこがシュリンクしていくのはGoogleにとってマイナス要素となる。マイナスではなくプラスにするための施策がAndroidでありChromeOSでありAdMob買収であるが、まだデスクトップほどの帝国は築けていないし、デスクトップ検索市場のときにはあった圧倒的な先行者メリットがモバイルでは無い。
  3. Googleは、Facebookにもユーザの可処分時間を奪われている(下の参考記事参照)。
  4. Googleは中国市場から撤退した。事情はともかく10億人のトラフィックを完全に諦めるというのは大変な決断なわけだが、今の世界で中国市場を無視したいと考える企業がどれだけあるだろうか?(それだけで世界シェアを10%〜20%捨てるということ)

参考記事:
メディア・パブ: グーグル時代からフェースブック時代へ,ネット・トラフィックの主役交代か
メディア・パブ: 勢いが止まらないフェースブック,グーグルの背中が見えてきた

今後ますますユーザの可処分時間がPCからモバイルとタブレットへと移っていくのがほぼ確実な状況下で、iPhoneiPadがモバイルの、例えば過半のシェアを握るようなことになれば、Googleそのものの企業の存続にも関わってくる。もっとも今のGoogleは、研究開発に投資しても投資しても使いきれないぐらいのキャッシュが文字通り腐るほど余ってるみたいだから、すぐにどうなるわけではないだろうけど。

逆にAndroidで市場を支配することができれば、Google帝国は向こう10年から20年は安泰ともいえる。Androidは最初の1年ほどは鳴かず飛ばずだったが、ここ半年ほどでDroid、Xperia、NexusOneと、UIもこなれてきてかなり評判が良い端末が続くようになってきたなという印象だ(それにしてもUIってホントに大事だ!)。

なお、ここではGoogleピンチみたいな論調で書いてみたが、目指すゴールが同じAppleにも全く同じことが言える。つまりiPhoneiPadがこければAppleのモバイル戦略はそこでオシマイである(この2製品しかないのだから当たり前の話だ)。基本的にはこの2社の戦いで、ここにMicrosoftとRIMとNOKIAがどのくらい食い込んでくるかという業界地図になりつつある。

Flashを擁するAdobeはもうちょっとOSレベルまで降りてきて野心を持てば面白いと思うのだがあまりにもリスキーだということで、遠巻きに、ニュートラルな立場で眺めようというスタンスだろうか?それともあまりにも各種オーサリング/デザインソフト事業がブルーオーシャンすぎて冒険できない企業体質になっているのだろうか?

Flash CS5以降では、ワンソース・マルチユースというのか、ひとつのプロジェクトから複数プラットフォームをターゲットとしてアプリを出力できる世界を夢想しているようだ。うまくいけばとてつもなく画期的なのだが、ほんとにそんな都合よく各プラットフォームに最適化された出力結果が得られるのかどうか。私は現時点では少々懐疑的に見ている。