イラレCS6アップデートでリンクファイルの扱いがようやくマトモになったことに関するメモ

イラレCS6のアップデートが来ていた(バージョンナンバーは16.1.0)。
そして、よ・う・や・く、リンクファイルの扱いがまともになった。
ちなみにこのアップデートの対象はCreative Cloudユーザ限定らしい。同じCS6でも、Creative Cloudユーザとパッケージ買いの人とで仕様が異なるという、予想外の展開。Creative Cloudを売りたい気持ちは分からなくもないが・・・というより、その気持ちが前面に出過ぎていて、これはかなり反発を買うのではないだろうか。
ともあれ、内容はかなり嬉しいものなので、試してみた範囲で紹介する。

リンクファイルの収集ができるようになった

これまで色んな場所の色んなファイルをリンクで配置しまくった結果、どのファイルがどこにあるのか分からなくなり、aiファイルを別マシンにコピーする際や環境移行したい際に訳がわからなくなってしまっていたわけだが(私だけ?)、そしてもう面倒くさくなり、苦し紛れに「リンクファイルを埋め込み」で保存し、aiファイルが数百MBとか数GBになって大変な思いをしていたわけだが(私だけ?)、そういうお悩みともついにおさらばできる時が来た。
リンクファイルの収集は、「パッケージ」という機能で実装されており、ファイルメニューより「パッケージ...」を選ぶとダイアログが出るので、あとは適当に設定するだけだ。パッケージングのスピードも早い。

パッケージの中身は?

パッケージといっても単なるフォルダなのでわかりやすい。上でユーザが指定したフォルダの中に、aiファイル、「Links」フォルダ、「Fonts」フォルダができる(そう、フォントファイルもコピーしてくれる)。Linksの中には、すべてのリンクファイルが格納される。Fontsにはaiの中で使用しているフォントファイルが格納されるが、他者に受け渡す場合などはフォントライセンスに留意する必要がある(という注意喚起のダイアログもいちおう出る)。ちなみにパッケージングで集めてくれるフォントは「欧文フォントのみ」とあったが、小塚ファミリーは書きだされているようだった。まあ自社フォントだしCS買った人には自動でバンドルされてるし別にいいか、という判断なのか?

「Links」フォルダはパッケージング以外でも使える!

パッケージ機能というと、なんだか他人に受け渡す場合以外には用途が無さそうだが、実は今回のアップデートで最大のポイント(だと勝手に思ってること)は、パッケージ機能に関係なく、Linksフォルダにリンクファイルを格納できるという仕様。
aiと同じ階層に「Links」というフォルダを作って、そこにリンクファイルを放り込んでおけば、イラレ側で勝手に認識して配置してくれるのだ。これはパッケージ機能で書き出したaiファイルじゃなくても有効だ。この仕様変更のおかげで、aiと同階層のフォルダに、大量のリンクファイルが散乱してしまうことがなくなる。今まで私はこのような惨状を目にするのを避けるため、例えば「デザイン」フォルダにaiもリンクファイルもすべて突っ込んだしかるのち、aiのエイリアスをわかりやすい場所に置くことで、臭いものに蓋をしてたわけだが、その必要もなくなりそうだ。

「Links」フォルダと同じ階層、どちらを見に行くのか?

同じリンクファイルが「Links」と「aiと同じ階層」にある場合は、まず「aiと同じ階層」を探し、なければ「Links」の中を探すようだ。これは保存時の状態に限らず常にこの順番で、たとえばリンクファイルがすべてLinksにある状態で保存したaiを閉じ、リンクファイルを今度はすべてaiと同階層にコピーし、再度aiを開いてみると、aiは同階層のリンクファイルを参照する。

この仕様はちょっと注意が必要で、たとえばLinksの「背景.psd」を配置している状態で、同じ名前で内容が異なる「背景.psd」を、aiと同階層においてしまうと、結果としてリンクファイルが入れ替わってしまう。しかもこのとき、aiは「編集済み」状態とはならない(これまでのイラレではリンクファイルの参照先が置き換わると、aiを開いた瞬間に「編集済み」となり、リンクファイルが置き換わったことを把握できた。例えば他階層に散逸したリンクファイルを同階層にまとめた場合など)。

「Links」フォルダの階層化はムリ

ここで少し期待してしまったのは、Linksの中にさらにフォルダ分けしてリンクファイルを格納できるかという点だが、これは残念ながら認識してくれなかった。


ファイルの配置に関する新機能はまだある(というか今回のアプデはファイル配置に関するものだけ?)。

画像の埋め込み解除ができるようになった

これまでは、一度ファイルを埋め込んでしまうと、再度リンクファイル化できず、埋め込みには相応の勇気と思い切りを必要としたが、新しいバージョンでは「埋め込みの解除」が可能になった。埋め込み済みの画像を、psdかtiff形式でリンクファイル化できる。
操作はリンクパレットで1ファイルずつ行う必要があるのであまり大量のファイルだと面倒くさいことには変わりないが、それでも嬉しい機能。できればリンクパレットで画像を複数選択し、すべてを一括でリンクファイル化しLinksフォルダに放り込んでくれるような機能も欲しかった。ファイル名は適当でいいから。

まとめ

その他リンクパレットで画像をダブルクリックせずとも下の領域にリンクファイル情報を出してくれるようになるなど、今回のアップデートは細かいけれども作業効率を大幅にアップしてくれる内容で、満足度が高い。派手な機能追加よりも、こういうアップデートのほうがどれほどありがたいことか(それだけに、CreativeCloudユーザのみというのはやはりどうかと思う)。

こんな機能改善をして欲しい

今回のAdobeのアップデートはちょっとヤル気を感じたので、ついでに要望を上げておく。この勢いでよろしくお願いいたします。

仕様改善系
  • アートボードの整列がしたい。
  • 標準で各種整列にショートカットがない件(現在は自前で整列アクションを作成してショートカットを割り当てるしかない)。
  • カラーパネルはRGB書類ならRGBスライダーがデフォだが、HSBやグレースケールスライダーにショートカット等でさっと切り替えたい。
  • フォントサイズのように線幅も、例えば cmd + opt + カンマ/ピリオド などのショートカットで狭く/広くしたい。
  • 重いファイルをリンクしてるとき、通常は画質を落とした状態で作業したい。最終出力するときだけちゃんとしてればOK。epsはそういうことができるが、psdやjpg、pngでもそうしたい。
  • わざわざ「Web用に保存...」しなくても、選択したスライスだけを右クリックやショートカット等で書き出せる機能。Web用に保存ダイアログは書き出し後の画質とファイルサイズのバランスを見るのに便利な機能だが、昔のようにシビアなファイルサイズ管理は必要なくなったし、経験を積んでくると、わざわざ書き出し結果を目で確認するまでもなく「jpg画質80」一択とか「GIF256」でいいだろーみたいなケースがたくさんある。それに多数のスライスのうち、修正が入った1つのスライスのためだけに、あの重いダイアログを開くのは苦痛です → 2012年10月30日追記:これは「ファイル>選択したスライスを保存...」よりできた。ただし画像形式と設定は選べないため、一度は「Web用に保存」で個々のスライスに対する書き出し設定を行う必要がある。→ 2015年9月15日追記の追記:フォトショのGenerator書き出し機能、あれをイラレでもお願いします!レイヤーパレットで名前を「hoge.png32」とかにすると「そのオブジェクトだけ」「勝手に」「png32で」書き出してくれる機能。あれすごい。イラレでいちいちスライス切って書き出してるとなんか俺時代遅れだなって思って悲しくなるんだよね・・・。
  • フォント選択はインクリメンタルサーチがいい。ショートカットで文字バレットのフォント選択(これは今でもできるが、デフォで左手だけで可能なキーアサインを!)からのインクリメンタルサーチ。日本語フォントでも欧文フォントネームを持ってるので出来るはず。その際は前方一致のみではなく部分一致で。前方一致のみだとモリサワは「A-OTF」、イワタは「Iwata(またはI-OTF)」、フォントワークスは「FOT」ばかりでインクリメンタルな意味がなく、あんまり嬉しくない。さらに「Shin Go(新ゴ)」は「shingo」で認識するように(要はスペースは無視)、そしてウェイト指定まで出来ないと作業効率はアップしないので、たとえば「hel bo」と打てば「Helvetica Bold」やら「Helvetica Bold Condensed」やら「Helvetica Neue Bold」が、「hira 8」ならヒラギノ各書体のW8がバババッとリストアップ→タブもしくはCtrl+Nで選択・・・・と、このようになってくれると、Adobeにもう一度忠誠を誓いたい気持ちになる可能性が出てくる恐れがあるかもしれないに違いない。ていうかここまでしてくれたら本当にかなりなる! → 2015年9月15日追記:追記が遅くなったがCCからこれは出来るようになった。しかもAdobeの開発者がここを見てくれているのだろうかと思うほどの、ほぼ完璧な実装で!! ただし環境設定で「フォント名を英語表記」にする必要がある。人によっては残念ポイントかもしれないが俺はいいよ、別に。ありがとう、Adobe
バグ系

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