日本の人口2100年に5000万人になっちゃう問題

日本の人口問題についての個人的メモ。

減る減るっていうけどどのくらい減るのか?

国立社会保障・人口問題研究所によると次の通り。2100年のデータは「参考推計結果」だそうだ。

上記はすべて死亡率については中位推計(男性平均年齢は84.19歳、同女性は90.93歳)。同研究所では死亡率についても高位、低位の推計を出しているが、出生率ほど人口に与える影響は大きくないようである。たとえば同じ出生中位で死亡高位と死亡低位の2100年人口は、それぞれ4861万人、5058万人で200万人の差しかない。若年死亡率が低い日本では死亡数で出産可能年齢人口が変わるわけではないのでこの結果はうなずける。日本における人口減少問題とは出生率低下問題と言い換えられそうである。

上記のデータをすばやく確認するには以下のページを参照のこと。
http://www.ipss.go.jp/syoushika/tohkei/newest04/youyaku.html
http://www.ipss.go.jp/syoushika/tohkei/newest04/sh6.html

全体はこちらから
http://www.ipss.go.jp/syoushika/tohkei/newest04/sh2401top.html

2100年9136万人のシナリオ

合計特殊出生率が2030年に人口置換水準(人口が減らない水準)である2.07まで回復し、以降キープしたと仮定した場合の人口推移を内閣府が試算している。この資料によると2060年に9894万人、2100年に9136万人である。
http://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/special/future/0214/shiryou_04.pdf

上のPDFは内閣府「選択する未来」委員会のH26年第2回会議の配布資料である。
http://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/special/future/0214/agenda.html

2.07ということは現状の頭でっかちの少子高齢化が改善した上での人口9000万人ということである。たしかに3000万人以上減るとはいえ、今の日本よりも過ごしやすい国になっていることだろう。ただし、たった15年で2.07は少々虫がよすぎるかもしれない(個人的には1.8あたりの推計が知りたい)。とはいえ世界には短期間で出生率を回復した国があり、今の日本の状況ごときで諦めるとか手遅れとかいう段階でないこともまた事実である。ネットの言説には悲観的すぎるものが多いとしばしば感じる。

出生率回復のモデルケース、スウェーデンとフランス

フランスでは1994年の出生率1.65が2010年に2.01に、スウェーデンでは1999年の1.5が2010年に1.98と急回復している。逆にドイツは日本と同じくらいの低出生率に悩まされている。アメリカの出生率が高いのはヒスパニック系のおかげとも言われているが(このグラフには載っていないが)白人の出生率も1.75くらいで低くはない。ただしここ数年漸減傾向のようである。
以下はGoogle パブリックデータのグラフへのリンク。
https://goo.gl/eTrknu
日本の最低記録が2005年の1.26だが、この水準から2.0近辺まで回復した例は皆無で、2015年は1.46と10年で0.2回復したとはいえ、もし1.8くらいまで回復したとすれば世界的にも注目される事例となる。少子高齢化は先進国や東アジア、東欧の新興国すべてが危機意識を持っている課題であり、世界が日本の行く末を見守っている。

その他

内閣府少子化社会対策白書
http://www8.cao.go.jp/shoushi/shoushika/whitepaper/measures/w-2013/25webhonpen/index.html
内閣府「選択する未来」委員会
http://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/special/future/index.html
上の「きみに質問BOOK」はわりとバズった模様。やはり見せ方って大事だなあ。
http://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/special/future/kimini_book.pdf
ということでもうひとつ。「子供向け」とあるが大半の大人もまずこれを読むべきだと思う。
http://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/special/future/sentaku/sanko2_0.html

5000万人じゃダメなのか?

以下はとくにデータやファクトにもとづいているわけではない感想文である。
そもそも論だが5000万人じゃダメなにか?人口は減っちゃダメなのかという話がある。
2100年で5000万人というと、それだけいればいいような気もしてくる。日本は、特に大都市圏は人口過密だし、少しくらい減ったほうが住環境が改善し、交通渋滞、通勤ラッシュが緩和されストレスも減るのではないか。待機児童問題も解消されるかもしれない。労働人口の減少はIT、AI、ロボットなど自動化テクノロジーにとって追い風となる可能性がある。それでも不足なら、日本には優秀な高齢者、高等教育を受けた女性がたくさんいるので、彼らを積極的に活用すればよい。世界には人口数千万人、数百万人でも豊かで幸福度の高い国がたくさんある。このような言説はネットには山ほど転がっている。

しかし減り続ける中での5000万人であり、わずか10年後の2110年には4286万人になるといえばダメさ加減が分かる。10年で市場が15%縮小するので普通に仕事してたら10年で給料が15%減らされるか、10年後に15%の人間がクビになるかである。「これからはグローバル!国内だけを相手に商売するのではなく世界に出ないといけない」とは勇ましいスローガンではなく切実な生き残り戦略だ。
このような市場環境では若者の起業意欲も刺激されないし、優秀であればあるほど、わざわざ苦しい日本ではなく海外でビジネスしようとするはずだ。人口は2100年までに60%減、そこから10年でさらに15%減だが、優秀な人間の減少スピードはそれをはるかに上回る可能性がある。
経済活動が鈍化すれば税収は減る。また少子化の中で高齢化なので頭でっかちの人口構成は変わらずということも相まって、社会保障制度が成り立たなくなる。年金支給額はさらに減り、医療費の自己負担は増える。子供を出産しても補助は出ず、子ども手当は削られ保育園は高くなり教員は減り義務教育の質は低下する。大学の学生も教員もレベルが下がり学費は上がる。現在でも社会問題化しはじめている空き家問題はスラム問題となり、治安が悪化する。取り締まる警察は数が足りない。このような状況は優秀な若者、裕福な家庭の国外退避の流れを助長する。

というわけで5000万人でもいいが「たった数十年で8000万人減少した上での5000万人」と「少子高齢化での5000万人」がダメということである。もっと長いスパンで徐々に減り続ける(たとえば出生率が長期的に1.8前後をキープ)のであれば各世代の負担も分散され、人口構成も今より若年層の厚みが出て改善するため、社会が人口減に緩やかに対応する余地が生まれる。壊滅的な状況にはならず、むしろ過ごしやすい日本になっているかもしれない。