予想以上のスピードでHTML5がネイティブアプリを追撃している。しかもAppleは(Flashのように)これを排除できないはず。

お急ぎの方は、なにはともあれ「iPadで」以下のサイトにアクセスすべき。そしてあれこれ適当にUIをいじってみるべき。
http://kivamobile.org/

HTML5がいくらリッチだ標準だと言ってみたところで、モバイルのネイティブアプリは動作もサクサクヌルヌルだし、iPhoneなりAndroidなりの各OSに最適化されてるし、機能的にも出来ないことはほぼ無さげだし、まだまだネイティブアプリのネイティブアプリたる所以を脅かすほどのものじゃあないなーと思っていた。

が、冒頭のサイトでも分かるとおり、HTML5は予想以上のスピードでネイティブアプリのサクサクヌルヌル感に近づいている。

その先鞭をつけたのは他ならぬAppleで、例えば以下のようなページをHTML5のためだけに用意しているほどの力の入れようだ。

●アップルによるHTML5のショーケース
http://www.apple.com/html5/

他にもiAdではHTML5によるリッチで訴求力の高い広告を、Googleに対する優位点としてジョブズ自ら猛プッシュしていたり、Flashをdisる(disれる)理由のひとつとしてHTML5を利用してみたり、SafariではMac/Win/モバイルすべてのバージョンにおいてHTML5対応を積極的に進めてみたり、とにかくHTML5へのコミットっぷりには並々ならぬ気合を感じる。

Flashのあからさまな排除はもちろん一部で評判が悪いのだが、結局ここも「iPhone/iPadの魅力」と「Flashの魅力」が天秤にかけられても「勝てる」という勝算があっての暴挙だろうと思う。そしてその狙いはもちろん、モバイルアプリ市場の囲い込みなわけだが、その流れをひたすれ推し進めるといずれブチ当たるのが次の疑問。

AppleHTML5をプッシュしすぎると戦略的に矛盾が出てきてしまうのでは?

HTML5が素晴らしいものになってくると、今度は、ネイティブアプリ要らなくね?HTML5で十分じゃね?AndroidにもWindows Phoneにも自動的に対応できそうだし。。。みたいな不埒なことを考える輩が必ず出てくる。ていうかもうウヨウヨ出てきてる。一例が例えば冒頭のデモサイトを作ったこんな企業で、TechCrunchによるとHTML5で大金ガッポガッポでウハウハなう。らしい。

●Senchaと名乗るウハウハなスタートアップ企業
http://www.sencha.com/

●TechCrunchのガッポガッポな記事
http://jp.techcrunch.com/archives/20100623sencha-html5-funding-sequoia/

すごい!俺も出資したい!!・・・というのは置いといて、ここで「不埒」とか「輩」というのはApple目線だと確かにそうに違いないのだが、ユーザや開発者目線で考えると諸手を挙げて大歓迎ということになる。ネイティブアプリと同じようにヌルヌルサクサクで動いてくれる上に、あんなメリットこんなメリットてんこ盛りだ。

  • iPhoneなど特定OSに縛られず、全モバイルユーザにリーチできる
  • 独自で課金しようが(しまいが)勝手
  • 独自でアプリ提供したりも勝手
  • エログロready

一番驚かされるのは、冒頭にも書いたように、当面はHTML5環境はネイティブアプリ環境には敵わないと(少なくとも私自身は)考えていたのが、意外に早く追いついちゃいそうだということ。

また、HTML5によるリッチアプリケーションの提供にあたってひとつの壁だと思われる「(Flashのような)開発環境どうすんねん?」という点についても、このようなフレームワークが整備されれば早晩解決する可能性が高い。

前にAppleによるAdobe買収の可能性なんていうのを考えてみたりしたことがあったが、こうなるとむしろ、AppleはSenchaのような企業をこそ買収すべきだとすら思える。まあこれは余談。

Appleの「矛盾」うんぬんに話を戻すと、HTML5が頑張っちゃうことにより、AppStoreやiBook Storeを「中抜き」するビジネスが成立しうるということだ。そしてこのことはAppleも百も承知なはずで、だとしたら中抜きされてしまう可能性についてAppleがどのように考えているかということが興味深い。

これについては、長くなるのでまた記事をあらためて書きたい。